悲嘆のプロセス

 鬼滅の刃面白いですよね。僕も好きです。アニメ放送も終わり、原作漫画に手を出した人もいるのではないでしょうか。まんまと集英社の罠にはまりましたね。僕もそうです。今回は鬼滅の刃についての投稿です。ネタバレ容赦しないので、悪しからず。

shonenjumpplus.com

今なら (2019/10/06 現在) アニメの続きの話 (53 ~ 61 話まで) も一部無料で読めます。無限列車編もいい話なので是非ご一読を

 https://shonenjumpplus.com/episode/13932016480029012627

 

 

 NARUTO の連載が終わり、ここ数年ジャンプ本誌から離れていて、アニメ化するまで存在すら知らない作品でした。アマゾンでの原作購入履歴を確認すると 2019/7/15 なので、アニメだと第 15 話のちょうど那多蜘蛛山に入る直前を見終えた時ですね。原作だと第 28 話に相当します。原作購入は 7 月だけど、4 月のアニメ第一話を見た時点で「(櫻井孝宏がよくしゃべるから)いいアニメだな」と本当は思っていました (那多蜘蛛山まで出番無し) (その次は柱稽古編) (無口) (どういう気持ちの顔これ)。

 

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吾峠呼世晴, 2019, 『鬼滅の刃』, 第 16 巻, 集英社, p.136

 アニメ第 1 話のころの印象と違い、那多蜘蛛山では無口天然ドジっ子コミュ障を遺憾なく発揮している富岡義勇さん (CV:櫻井孝宏)。しかしながら原作を読み進めていると、むしろ第 1 話での印象がたぶん元来のそれに近いんですよね。それが明らかになる原作第 130 話、131 話の富岡義勇少年時代…笑顔が眩しい…。NARUTO 戦場のボーイズライフ みたいに義勇と錆兎の少年時代外伝描いてくれワニ先生。女に生まれてたら間違いなくショタ好きこじらせて Vtuber の詩子お姉さんみたいになっていたと思う。蔦子姉さん、錆兎、未熟でごめん… 


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 突然ですが死について考えたことはあるでしょうか。僕はあります。お腹を壊して入院してた時に十日から二週間くらい点滴だけで過ごした経験があります。特に何かをする気力があるわけでもなく、ただベッドの上で虚空を見つめてました。それがたぶん今のところ一番身近に死を感じた時でした。ひと月と少し前にも、ちょうど盆の朝に我が家の犬が他界しました。最後は腎不全で享年14歳8か月でした。犬嫌いだけどとても人懐っこく (特に若い女の子が好き)、食いしん坊な女の子でした。

 

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 祖父が亡くなってからしばらく、祖母が「まだ爺さんがふと現れたりするんじゃないかと思ったりする」なんて言っていました。十数年前の当時はよくわからなかったんですが、十数年一緒に過ごした家族が居なくなった今はその気持ちがよくわかります。ふとした瞬間に影を探したりするんですね。例えば、帰宅直後にいつも撫でていたので亡くなったのを忘れて探したり、リビングで横になったときにすぐ駆け寄ってきてたのに今日は来ないなとか。習慣って怖いですね。 

 死を悼むだけなら別にブログに記事なんて書かなくてもいいんですが、一応これでも資格持ちの医療人 (無職) ですので、上記のような思慕がどういうものなのかちょっと考えてみようと思ったわけです。

 死というものを取り扱う上で、心理学や医療に関わる人ならたぶん誰でも一度は読んだもしくは習ったことのあるのが、エリザベス・キューブラー=ロスの『死ぬ瞬間 死とその過程について』 だと思います。掻い摘んで紹介すると、多くの人は自身の死の受容について以下の五段階を経るという話です。

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)

 
  1. 否認
  2. 怒り
  3. 取引
  4. 抑うつ
  5. 受容

 自分の場合は病名診断即入院即末梢静脈栄養 (PPN) と駆け足だったせいか、1~3 すっ飛ばして 4,5 でしたね。これは"自身の"死の受容であって、我がことのように共感できる人ならまだしも、これは”他者”の死の受容ではないんじゃないかと考えました。先ほども述べたように、一応医療人ですから終末期医療 (ターミナルケア) とか緩和ケアについては習っているし知っているけれど、その後については習っていないし知らないなと思い調べたらありました。

アルフォンス・デーケン (2000) 『生と死を考える』 春秋社

生と死を考える (生と死を考えるセミナー)

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 悲嘆のプロセス

  1. 精神的打撃と麻痺状態 数日から1週間
  2. 否認 
  3. パニック
  4. 怒りと不当感
  5. 敵意とルサンチマン
  6. 罪意識
  7. 空想形成、幻想
  8. 孤独感と抑うつ
  9. 精神的混乱とアパシー(無関心)
  10. 受容 あきらめ
  11. 希望 ユーモアと笑いの再発見
  12. 立ち直り 新しいアイデンティティの誕生

 人間はカテゴライズするのが好きですね (そうでないと分析できないわけですが)。通常の悲嘆においては 1~9 まで数年程度かかるそうです。無論、先ほどの死の受容 5 段階と同様に、全ての人が経験するわけではありません。最近ではこの悲嘆 grief を上手く乗り越えるための支援をグリーフケアというそうですね。ぶっちゃけると知りませんでしたはい。病的悲嘆は、米国精神医学会 (APA) より刊行されている精神障害の診断と統計マニュアル第 5 版 DSM-5 にも Persistent Complex Bereavement Disorder : PCBD 持続性複雑死別障害として記載されています。

 ちょっと古い作品だとグレンラガンとかいい例ですよね。鬼滅の刃では富岡義勇、胡蝶しのぶ、猗窩座、那多蜘蛛山の累とかがわかりやすい反応をしています。炭治郎とかは伊之助のおかげで煉獄さんの死を逆に上手く消化できた例だと思います。鬼滅の刃って鬼にも物語を用意してたりするのが、初期の D.Gray-man みたいでいいですよね。すこです。

 鬼滅の刃のテーマというか、作者のワニ先生がやりたかったことは「死を介して託され繋ぐ想い」だと思うんです。文字に起こすと臭いですね。でもワニ先生の連載ボツ案「鈍痛風車」が地獄からの回生を目指す話だった ((吾峠呼世晴 (2019) 『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』 p.201, 集英社))) みたいなんで、根っこはそれなんじゃないかなと。富岡義勇の回想シーンで初めて気が付きました。実質 FUNBARE☆RUNNER です。

【Tokyo 7th シスターズ】777☆SISTERS 1stシングル「僕らは青空になる / FUNBARE☆RUNNER」Trailer - YouTube

 もう書くの疲れたんで、〆としてはナナシスを聴きながら鬼滅の刃を読んでください。鬼滅の刃 第 17 巻に合わせて発売したワニ先生の短編集もよろしくお願いします 。

鬼滅の刃 17 (ジャンプコミックス)

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吾峠呼世晴短編集 (ジャンプコミックス)

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